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#第1部文法編
 
◆文法編(助詞・助動詞を中心に)
◆三河弁の特徴(のんほいとじゃんだらりん)
「のん」 「ほい」 「のんほい」・「のんほえ」 「じゃん」 「だら」・「ずら」(「づら」)・「ら」 「りん」
◆その他の特徴的な語句
「えん」 「か」 「かん」 「げな」 「しょう」 「すか」 「だに」 「だん」 「まい」 「もんだい(だもんだい)」 「んどる」

三河弁の特徴--「のんほい」「じゃんだらりん」--

 三河弁の特徴は「じゃんだらりん」だと、地元ではよく言われる。同時に東三河の方言の特徴は「のんほい」だともいわれる。いずれも特徴的に使われている「助詞助動詞」を羅列した言い方である。

 東三河地方で特徴的に使われるのが「のん」「ほい」であり、それに対して「じゃん」「だら」「りん」は広く三河地域で共通して使われる。

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●「のんほい」●

のん

 「のん」は共通語の「ねぇ」に相当する。共通語の「ねぇ」の用法として、「いい絵だねぇ」と終助詞としてはたらく場合と、「ねぇ、ムーミン」というように感動詞としてはたらく場合との両方が認められる。その点でも「のん」は「ねぇ」とよく似ている。
 ex.
 ・ほい、今日はいい天気だのん
          (いい天気だねぇ)
 ・そうだのん。こりゃぁいいのん
          (そうだねぇ/いいねぇ)
 ・のん、ムーミン。こっち向きん。
          (ねぇ、ムーミン。こっち向いて)

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ほい

 「ほい」は「おい」や「はい」と同様に呼びかけ応答の感動詞で、発音も似ているので発生的には同じかと思われる。だが、呼びかける時にも応じる時にも使うという点で、用法的には「やぁ」とか「やい」を想定したほうが理解しやすい。詠嘆を込めて「ほーい」という用例もある。
 ex.
 ・「ほい、元気かん?」
          (おい、元気かね?)
 ・「ほーい、やっとかめだのん。どこへ行っとっただん」
          (やぁ、久しぶりだね。どこへ行ってたの?)

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のんほい》《のんほえ

 上記の「のん」と「ほい」の連語。「のん」と同様に、終助詞として使われたり、感動詞として使われたりする。「のんほえ」や「のんほえー」などと発音することも多い。

 口語ゆえに、必ずしも「文」の意識が強くなく、文末にしか使われないという断定もしにくい。また、「○○だのんほい」というように、「のん」と「ほい」とを別語として間を切るいい方もある。
 ex.
 ・(たとえば連日の雨でうんざりしている二人が出会って)
  「のんほい、こう雨ばっかじゃ嫌になるのん。稲刈りはいつせるだん」
          (感動詞。「ねえ、こう雨ばかりでは嫌になるね。……」)
  「そうだのんほい。ほんとに困るのん」
          (終助詞「そうだねぇ。ほんとに困るね」)

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●「じゃんだらりん」●

じゃん

 「じゃん」は話し言葉としては広く日本全体に認知された言葉ではないかと思われる。名詞や活用語の連体形に接続する活用がないため終助詞とする見方もできるが、陳述から助動詞と見る方が適当であろう。意味は「詠嘆を込めた断定」「共感を込めた断定」「訴えを込めた断定」くらいが適当だろう。共通語の「〜じゃないか!」「〜じゃやないの!」に相当すると思われる。

 語構成としては、断定の助動詞の連用形「で」に係助詞「は」がついた「では」が転じた「じゃ(ぢゃ)」に、打消の助動詞の「ぬ」がついた形であろう。打消の語が含まれるが、反語としての語感で使われ、論理的には肯定である。
 ex.
 ・いいじゃん、蒲郡。
          (お、いいじゃないか!蒲郡)
 ・偶然出会ったんだけど、知らん人じゃなくて幼なじみだったじゃん
          (幼なじみだったのだ)(幼なじみだったじゃないの)

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だら》 《ずら(づら)・つら》 《》 

 「だら」は「だろう」。推量・賛同などの意味で使われる。
 感情を込めた「だらぁ」も多用される。古形は「であらむ」で、「であら」が「だら」に変じ、「む」が消滅(無音化)したものか。活用がなく、名詞や活用語の連体形に接続する
 ex.
 ・こんな雲が出てきたんじゃ、明日は雨だら
         (こんな雲が出てきたのでは、明日は雨だろう)
 ・お前、このまえ、笑っとっただら
         (笑っていただろう)
 ・そうだらぁ
         (そうだろぉう)

 「ずら」も「だろう」。推量・賛同などの意味で使われる。
 「ずらぁ」というような言い方もある。
 ex.
 ・こんな雲が出てきたんじゃ、明日は雨ずらか。
         (明日は雨だろうか)
 ・お前、このまえ、笑っとったずら
         (笑っていただろう)
 ・そうだらぁ
         (そうだろぉう)
 右の例文は、「だら」と同じものを掲載したが、「だら」から、変化してきたものと思われる。

 しかし、「だら」とは別の語に由来すると思われる「ずら」がある。
 ex.
 ・あれだけもう飲まんちゅうただが、おしゃ飲んずら
         (飲んだだろう)
 「雨ずら」、「飲んだずら」の「ずら」は、「飲んずら」の「ずら」とは、接続が異なり。別の語に由来すると思われる。山口幸洋氏はこの「ずら」について、「つらむ」をその語源としている。「行った」・「飲んだ」の推量形が「行っつら」・「飲んずら」であるという説を紹介している(「静岡県の方言」山口幸洋著・静岡新聞社)。

 「だら」に由来すると考えるものも、「つらむ」に由来すると考えるものも、いずれも現在では「推量」の意味で使われていて、全く同一の語と認識されている。表記は「ずら」だが、その語源まで考えると「づら」のほうがふさわしいかもしれない。

 また、同じく、推量の意味で使われる「
 ・明日、雨降る
         (明日は雨が降るだろう)
 ・お前、このまえ、笑っとった
         (笑っていただろう)
 ・そうなるらぁ
         (そうなるだろぉう)
 この「」のとらえかたで、「だら」や「ずら」の考え方もまた変わってくるかもしれない。

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りん》 《

 「りん」は三河弁の特徴的な語であり興味深い。動詞連用形についてやわらかな命令・勧誘を示す助動詞だが、その上接語が限定される。
 ex.
 ・(好き嫌いを言う子に母が)
  「まずいかどうか、いっぺん食べてりん
         (まずいかどうか、一度食べてみな)
 ・(調理場でいっしょに料理をする子に母が)
  「わたしが皮をむくで、あんたはりん
         (わたしが皮をむくから、あなたは煮なさい)
 ・ぐずぐずで、ちゃっとりん
         (ぐずぐずしないで、急いでやれ。「りん」とも)

 これらは「りん」でなく「」を用いることが可能である。つまり、「食べて(食べてみな)」「(煮なさい)」「ちゃっと・ちゃっと(早くやれ)」とも使う。以下の用例も同じ。
 ex.
 ・もうやめりん
         (もうやめな。「やめ」とも)
 ・早く起きりんよ。
         (早く起きなよ。「起き」とも)

 ところが、動詞(上接語)によっては「」は使うことはあるが、「りん」は決して使わない用例がある。
 ex.
 ・聞こえで、もっと大きい声で呼び
         (呼びな。「呼びりん」とは決して言わない)
 ・さあ、元気を出して。いつもみたいに笑い
         (笑いな。「笑いりん」とは決して言わない)
 ・まだ借りとるだかん。はや返しよ。
         (返しなよ。「返しりん」とは決して言わない)

 また、「走る」「切る」などのラ行活用の動詞は連用形活用語尾が「り」となるために、表面的には「走りん」「切りん」となる。これはあくまで「走り」「切り」であって、「りん」「りん」ではない。また、「走りりん」「切りりん」とは決して言わない。

 これらの「」については、そもそも単独で命令・勧誘を示す終助詞で活用語の連用形に接続する。共通語の命令をあらわす終助詞「な」と同根と思われる(この「な」一般に「なさい」の省略形から発生とされる。)念のためにふれるが、上記用例中の「し」「聞こえ」の「」は、未然形に接続して打消の意味を示す助動詞である。

 さて、以上のことから、三河弁の特徴のように言われる「りん」だが、ラ行活用動詞の連用形活用語尾「り」に命令の終助詞」のついただけの、いわば見かけの「と、上下の一段活用サ変活用の動詞にのみ接続可能な(いずれの場合も連用形)、命令の終助詞の「りん」(正真正銘の「りんとでも言おう)とがある。

 この正真正銘の「りんについて、発生的語源的な分析は現時点では不明である。連用形接続で単独で命令・勧誘の終助詞である「」の存在すること、「ら」「り」「る」「れ」「ろ」が動詞の造語成分(「ダブる」「サボる」などはそうしてできている)で「り」が連用形であることを考えると上一段動詞や下一段動詞、サ変動詞にも連用形活用語尾「り」が想定され、りんという形で顕在化しているという仮説も可能であろう。

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●その他の特徴的な語句●

えん

 「えん」は「のん」と同様に共通語の「ねぇ」に相当する。

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もんだい》 《だもんだい

 「〜もんだい」は終止形に接続し、「〜ものだから」という意味である。「〜だもんだい(〜だものだから)」という形は安定して使われるが、必ずしも断定の「だ」が上接するとは限らない
 ex.
 ・警報機が鳴っているんだもんだい、このまま進んではまずいだら。
          (なっているのだから)
 ・お前がそういうもんだい、話がややこしくなるのだ。
          (そういうものだから)

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だに

 ・ほんでさぁ、びっくりしただに
          (びっくりしたんだよ)

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だん

 断定の助動詞「だ」に終助詞の「ね」がついた「だね」に、語意としても、発生的にも極めて近いと思われる。「だね」よりも親しみがあり、むしろ、「だよ」に極めて近い語感がある。

 疑問で「なんでまっとはやく言わんだん」とか「いつからせるだん」と使うことが多いが、疑問文に限定されるわけでもない。
 ex.
 ・なにやっとるだん
          (なにやっとるだよ)
 ・なんでまっとはやく言わんだん
          (どうして、もっと早く言わないんだ)
 ・いつまでやらせるだん
          (いつまでやらせるんだよ)

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かん

 疑問の終助詞「か」に終助詞の「ね」がついた「かね」に極めて近い語感。疑問の副詞がなくても疑問文になる。反語の用法もある。
 ex.
 ・なんだん、はい終わっちゃっただかん
          (なんだい、もうおわてしまったのかね)

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まい

 勧誘の助動詞まい」。例えば、「いっしょに行こう」という意味で使う場合だが、
 ex.
  ・いっしょに行かまい
  ・いっしょに行くまい
  ・いっしょに行こまい

 という3通りがある。

 いずれも、誘いをかける意味だが、「いっしょに行かまい」「いっしょに行くまい」は三河弁の典型的な言い方であるのに対し、「いっしょに行こまい」は名古屋弁的である(「まい」は名古屋弁独特の「みゃァ」という発音になる)。

 共通語の「まい」は、打消推量、打消遺志の意味でつかわれるため、場面によっては逆の意味になることもある。

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すか

 打消の終助詞すか」。未然形に接続する
 ただ「打消」というよりも、「強い否定」または「反語」と呼ぶほうが、語感をよくあらわす。「○○はしない」という「とりたて打消」という呼び方もある。
 ex.
 ・そんな変なもん、あらすか
          (そんな変なものあるはずがない)
 ・嘘なんてつかすか
          (嘘なんてつくもんか)
 ・そんなひどいことできすか
          (そんなひどいことできはしない)

 「あらすか」が「あらーすか」、「できすか」が「できーすか」などと上接語が長音となることも多く、長音のほうが語気が強い。

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しょう》 《しょー

 命令を表す。「せよ」の変化か?
 ex.
 ・見してみしょう
          (見せてみよ)
 ・「なんとか頼むよ」
  「まかしょう
          (まかせておけ)(まかせよ)

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げな

 伝聞の助動詞。活用語の終止形に接続する。古語の「けり」の変化したものかとも思いつくが、接続が違うので不適当。むしろ、「かなしげ」「さびしげ」などの「げ」に近いかとも思うが、不明。
 ex.
 ・あんしゅうは、きんにょう、入院したげな
          (入院したそうだ)
 ・明日、見舞いに行くげなだが、おしゃどうするだ?
          (見舞いに行くそうだが)

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 疑問・反語の終助詞。共通語の「か」と同様に使うが、上接語が長音化することがある。口語形の未然形「こう、よう」で考えるよりも、文語形の未来推量の助動詞「む」を想定した方が、この長音化は考えやすいと思われる。
 ex.
 ・いっぺん、試しにやってみー
         (「やってみようか」※「みむか」→「みーか」)
 ・そっちに行くか、行かんか迷っとるだけど、そんなにいうなら行かーねえ。
         (「行こうかね」※「いかむか」→「いかーか」)
 ・大丈夫。あんじとるようだが、雨なんか降らーやぁ。
         (「降るかやぁ」※「ふらむか」→「ふらーか」)

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とる》《っとる》《んどる

 存続の連語。共通語の「〜ている」は「〜とる」「〜っとる」という形で、「〜んでいる」は「〜んどる」という形になっている。
 ex.
 ・ほい、隣の衆は最近見んだが、どうかせただかん。あんたっとるかん。
         (「知っているかね」)
 ・なんだん、知らなんだだかん。ひどいぎっくり腰で入院せとるだに。
         (「入院しているんだよ」)
 ・なんだんまぁ。知らんどったやぁ。
         (「知らないでいたよ」)

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BGMは須釜俊一氏のフリーMIDIを使わせていただいています。紹介して謝意を表したいと思います。